握りの形状と手の内の働き

人それぞれに異なる手の形状は単に大きさのことだけではありません。
例えば指の長さと手のひらの大きさの比率など、手の外形的な特徴は人によって大きく異なっています。
手の特徴に適応できている握りは、手に無理を強いることがなく、柔らかく自然な手の内をもたらします。

  • 幅が狭すぎる握りを使用して、手の内を難しくしている例が多くあります。
    これまで握り幅の調整はあまり行われて来ませんでした。適正な幅に整えることは、軽く柔らかい手の内を実現する上で大変重要です。
  • 握りの高さと内竹側の曲面形状は、打起しから大三への移行過程で握り革と手の皮が自然に絡み、手の内全体に弓がしっくりと収まって行く働きに密接にかかわっています。

握りの幅について

握りの幅は、天文筋と三指第一関節の間の長さに関係しています。大三の完成時に、三指の関節が外竹の右角に自然に収まり、指を締めなくても安定し て弓を保持できる幅が最適です。

  • 幅が狭すぎると、大三への移行時に弓が手の中で自然に止まらなくなり、固く握る手の内になりがちです。
  • 幅が広すぎると、三指の第一関節が収まらず、指先で強く抑えざるを得なくなります。

自然な柔らかい手の内をつくるには、最初に幅を定めることが大事です。

高さについて

幅が決まると次は最適の高さを探します。自分の手に適した高さは、会の手の内を作った時に中指の爪先と母指球(親指根元のふくらみ)の間に、適切 な間隔ができることが必要です。

  • 握りが低すぎると、この間隔がなくなり、弓を握りしめる手の内になって伸びのある良い離れができない原因となります。
  • 握りが高すぎると、この間隔が広くなり過ぎ、三指の指先で弓を抑えざるを得なくなるとともに手の内が弓力に負け、伸びのある良い離れができない原因となります。


握りが低すぎる場合                 握りが高すぎる場合

内竹側の曲面について

理想的な柔らかい手の内は、大三に移行する時に握りが手の中で回転し、内竹曲面の革と手の皮が自然に絡み、手の内全体に弓がしっくりと収まって止る大三となります。

この働きには内竹曲面の形状が密接にかかわっています。 その形状の如何によって、正しい大三の位置で自然に弓の回転が止まらず回りすぎることがあります。そうなると大三で手の内を定めるために強く握り締めざるを得なくなり、手の内が固くなる原因になります。

内竹曲面の形状としては、蒲鉾型や角の丸い台形等がありますが、自分の手の感触に照らして工夫調整することが大切です。当品の曲面形状も一つの参考例としてご活用いただければ幸いです。

自分の手に適している握りかどうかは、次の事項を参考にして考えてください。
詳しくは指導の先生にご相談ください。 

  1. 外竹の左角が天文筋に収まる。
  2. 外竹の右角に三指の第一関節が揃って収まる。
  3. 内竹右角の曲面に親指の付け根(角見)が収まる。
  4. 中指先と母指球 (親指根元の肉球) の間に適切な間隔が生まれる。

最適な形状の握りを使い始めると、自然な手の内が安定するようになります。それが手の内の技量向上を早めます。
射に臨む中で「この握りなら必ずいつも通りの大三に収まる」という信頼感とともに、平常心を支える強い味方としていただけたら幸いです。

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